観劇サポートガイドブックを活用し、各地のフェスティバルにおいてアクセシビリティ面の向上がはかれるよう、聴覚障害当事者が手話通訳者とともに出向き、主催者に具体的に助言を行う取り組みを行うこととした特定非営利活動法人 シアター・アクセシビリティ・ネットワーク。その活動について具体的にアンケートで伺いました。
今回の事業内容の中で、貴団体にとって、新しい取り組みはありましたか?
観劇サポートガイドブックについて改定に伴い、新しい取り組みとして電子書籍としてデータ化することにより、紙よりもさらに広く読まれることを期待しています。
電子書籍ということで新たな読み手を獲得した際にどんな展開が期待できると思いますか?
紙媒体の場合だとメリットは1人一冊手元において書き込んだりできます。数冊持っていると、その人から別の方に直接手渡してもらい読んでもらえます。
デメリットは○冊欲しい⇒送料を計算⇒入金確認⇒発送という時間的な手間がかかります。
PDF形式ではなく電子書籍にすることで、モバイル機器でも読めること、特に見えづらい方には白黒反転やフォントのサイズを調整できることにより、より広くの方々に読まれることを期待しています。
そして見えにくい当事者にもこの本を盾として自分に合った観劇サポートを活用し、より豊かな楽しみを享受できることを期待しています。
観劇サポートガイドブック〜視覚・聴覚障害者編〜の1ページ。講演を行う団体が視覚・聴覚障害者にどのような配慮をすればいいのかなどのアドバイスも書かれている。
今回の事業の中で貴団体のもつ特性を活かせましたか?
「各地フェスティバルでのアクセシビリティ取り組みへの助言活動」については当事者ならではの視点で気づいたことを伝える取り組みを行いました。これまでは「助言を求められるまで待っている」姿勢でしたが、視察のために必要な費用(当事者と手話通訳者の2名分)が用意されることによって、遠くてもそこへ赴いてお話するチャンスをいただけたのは非常に良かったのではと思います。
実際に出会うことによって見えてきたものとはどんなことでしょうか?
公式ブログにて以下の通り報告しております。
・国民文化祭にいがた2019、全国障害者芸術・文化祭にいがた大会「みんなが楽しめる演劇鑑賞会」視察
https://blog.canpan.info/ta-net/archive/630
・「あいちトリエンナーレ2019」視察
https://blog.canpan.info/ta-net/archive/631
視察中、筆談で対応している様子。
筆談用としての道具が展示として利用されてた。
・2019年度とっとり手話まつりinとっとりでお話ししました!前日は「鳥の演劇祭12」字幕付き公演を視察しました
https://blog.canpan.info/ta-net/archive/640
字幕はそれぞのれスマホアプリで見る仕組み。
・「BeSeTo演劇祭26 + 鳥の演劇祭12」を視察しました
https://blog.canpan.info/ta-net/archive/647
・アートポイントさっぽろ2019「札幌劇場祭」座・れら「私」舞台手話通訳付き公演を視察しました
https://blog.canpan.info/ta-net/archive/646
衣装も劇に合わせた手話通訳者が。
いずれも自分の足で現地に赴き、舞台(公演)単体だけのアクセシビリティだけでなく、例えば空港・駅から会場の利便性、会場の広さを感じたりパンフレットをもらったりという行為を通して、聞こえない当事者としてだけでなく盲、盲ろう、肢体不自由など障害当事者にとって使いやすいフェスティバルとは何かを考える良い機会になったと思います。
大規模なフェスティバルではありがちですが、会場があちこちにばらけていると見えない人や移動に不便さを感じる人には大変です。聞こえない人は電話ではタクシーを呼べません。また自分が行ったことのない土地だと、どの電車を利用すれば会場まで行けるのか、アナウンスがあっても聞こえませんし、誘導がないと分かりづらいです。この場合、空港や駅の運営会社との協力が不可欠になると思います。
公演では手話通訳をつけているものもありましたが、ある公演では手話通訳派遣の原則通り上から下まで黒一色、舞台の雰囲気に合わず残念な思いをしました。鳥取では直前に理事長の廣川麻子が講演をしていたということもあり、背景になじむ白いシャツでの通訳で、作品世界に没入できました。
また、参加されている障害者にお話を伺うということも行いました。東京は舞台手話通訳、字幕、音声ガイドの公演は多いのですが、東京以外となるとなかなか機会がありませんので、障害者自身も楽しめるかどうかわからない、行ってみて楽しめなかった、ああやっぱり、ということになりがちです。障害者が出演する舞台だから情報保障をつけるという考え方ではなく、さまざまな公演を「みんなで一緒に楽しむ」ために手話通訳等をつけるような方向へ進んでいけたらと思っていますし、とくに国民文化祭においては基本的にすべてに付ける方向でお願いしたいと思っています。各県持ち回りのイベントなので、専門の担当者がつきっきりでいるわけではないようですが、よく勉強されていましたし、頑張っておられたと思います。しかしながらやはり、障害当事者からすれば「参加できるプログラム」が少なすぎる感は否めません。1人2人の担当者だけでなく、制作会社、広報等を委託する民間会社をも巻き込んで、関わる人すべてに観劇サポート講座や接遇研修を行うくらいの勢いが必要だと感じました。
回答ご担当者様個人としてお答えいただければと思いますが、活動を通して、考え方への変化、日常に対する変化などがあれば教えてください。
私、石川はTA-netを2012年に廣川と設立して以来ずっとこの活動をしてきておりますが、聞こえない当事者として変わらぬ思いは「みんなで一緒に舞台を楽しみたい」ということです。舞台そのものだけでなく、楽しめる舞台の「数」も「日程」も「アクセス方法」ももっともっと増やしていきたい、と思っています。 例えば字幕も映画業界ではUDCast(セカンドスクリーンの専用アプリを利用した言語バリアフリー化サービス)を利用して、眼鏡で楽しむ機会が増えてきていますが、オープン型の日本語字幕上映のニーズも少なからずあります(私自身も眼鏡ではなくオープンで楽しみたい派です)。オープン型は3日間、朝一番のみ、という制約が多いところもありますが、それでもオープン型の上映日時に足を運んで鑑賞します。 「これ1つだけ用意すればよいでしょう」というのは「押し付け」だと思います。できる限り希望に合わせるとなると、後付けは制約もありいろいろ大変になりますので、結局は計画段階から当事者に参加してもらった方が、話が早いと考えます。これは設立以来考えていることですので、今回の事業を通しての変化はないという回答になると思います。
先の未来にこの課題に取り組みたい、また、こういったことができればいいなと思うことはなんでしょう?
TA-netは中間支援組織としての存在でありますが、一番の強みは「現場を知る当事者が動いている」ということだと考えています。
TA-netは理事長の廣川が劇団俳優から出発して制作としても関わることにより、「舞台というものを知っている」という点があげられます。事務局で働く石川は観劇専門で舞台に関する知識や経験はさほどありませんが、2017年度国内専門家フェローシップ制度を利用して2か月ほど舞台制作や観劇サポートの現場で研修させていただく機会に恵まれました。
1つの実演芸術を作っていくにあたって、現場における知識がある・経験があるということは重要な前提条件となります。そういった人材として介入していくことで、プロとして対等な関係でその作品の世界観を尊重しながら対応していきやすくなります。そうして少しずつTA-netを売り込んでいき、パイプを太くしていくことで「観劇サポートをしたい、そうだTA-netに相談しよう」というふうに認知されてきていると感じます。廣川理事長が文化芸術基本法改正や「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」策定の際に関わることになりましたのもそういった活動が認められたからだと思っております。
PROCESS
制作スケジュール5月
印刷会社に見積もり依頼
9月
観劇サポートガイドブック改訂案洗い出し
10-1月
前回担当者に修正箇所の確認と赤字入れの依頼
2月
印刷会社へ入稿・制作
3月
電子書籍完成
PROFILE
事業団体について
特定非営利活動法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク
観劇サポートガイドブック改訂および各地フェスティバル等におけるアクセシビリティ取り組みへの助言活動
(1)各種フェスティバルを、聴覚障害を持つ当事者の目線で視察を行い、担当者と意見交換を行う。準備の段階からアドバイスができる場合は、適宜、現場に出向き、アドバイスを行う。
(2)「鑑賞サポートガイドブック」を改訂し、電子書籍化する。
電子書籍でお読みいただけます。
https://ta-net.org/guidebook/
読み上げに適したテキスト形式はこちら
https://ta-net.org/guidebook/index_text.html
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