劇のたまご「ぐりぐりグリム~シンデレラ」舞台美術製作プロジェクトと題して、演劇づくりに取り組む北海道演劇財団(詳しくはこちら)2018年度より地域社会の包摂事業として、アートで子どもの療育をサポートする児童デイサービス「ペングアート」とも協働をはかり、障害のある子もない子もともに舞台づくりに取り組む姿勢、そして、そこから見えてきたことなどアンケートで伺いました。
今回の事業内容の中で、貴団体にとって、新しい取り組みはありますか?
以前に発達障害のある子どもたちと協働して舞台美術を製作する事業を実施したことはありました。しかし、その枠を広げて公演の前に舞台美術の一部を、俳優と講師、発達障害のある子どもたちがリードして、観劇に来た未就学児から小学生(外国の子どもたち、特別支援学校や児童養護施設の子どもたちを含む)とともに制作しました。その日の舞台美術を劇場で完成する取り組みをおこなったことはありません。また、そこは子どもたちが交流できる場にもなってたというのも新しい展開でした。
初めての試みということで運営はいかがでしたでしょうか? 苦労された点など教えてください。
今回、舞台美術で協働した札幌市にある児童デイサービス「ペングアート」のスタッフは経験も豊かで専門家が多く、障がいのある子、外国籍の子など、様々な環境や年齢の子どもたちが短時間で一緒に作れるものが何かを検討し、それを作るのに必要な材料や道具の準備を担当してくれました。出演者も含めワークショップの講師たちは日ごろから小学校、中学校、高校でのワークショップを行っているベテランを配置したので、子どもたちをつなげ、一緒に作業できる雰囲気を作り、演劇が劇場にいる全員で作ることをしっかりと伝えられました。それぞれの得意な分野で連携しておこなったことで運営はスムーズだったと思います。
発達障害のある子どもたちは一人ひとりに個性があります。例えば、物を作る順序や方法にこだわりの強い子は、他の子に自分のこだわりを押し付けているように見えます。それを手本として紹介することで、互いのコミュニケーションを促すようにするなど、苦労ではありませんが、その個性を受け入れ、全体をまとめることに配慮しました。
清田公演(開演前)
今回の事業の中で貴団体のもつ特性をどのように活かせましたか?
当財団は、90席の小劇場(扇谷記念スタジオ・シアターZOO)を運営しています。この施設を利用して、協働したペングアートの子どもたちと大道具製作のイメージを膨らましたり、組み立てたり、実験したり、完成させるなどしました。
普段は劇場に来ることがほとんどない障がいのある子どもたちが劇場を利用することで、演劇や舞台芸術に関心をもち、表現の幅を広げられるようにしました。
子どもたちにとってもはじめての体験、ということですが、具体的にどのような反応をされましたか? 子どもたちの具体的な言葉などがあれば教えてください。
個々には、感想を聞いてはおりませんが、「ペングアート」の子どもたちと保護者の方たちは、公共劇場の大きな舞台で自分たちが手掛けた舞台セットで演劇がおこなわれたことを喜んでいました。終演後に、自分が描いた絵や造形物を指さして会話をしたり、記念撮影をする姿が印象的でした。「ペングアート」のスタッフからは、展示会はこれまで何度も行っているけれど、自分たちの作品が物語の中で活躍し、立体となって立ち現れてくることに、子どもたちは驚き、感動していたと聞いています。また、アートは個々の表現ですが、それぞれの表現を大切にしながらもひとつにまとめる舞台美術に取り組むことで、集団創作の面白さも感じていたと聞きました。
今回は、札幌市の子ども未来局と連携し、市内の児童養護施設の子どもたちを招待しました。6団体70人ほどが参加しましたが、十数名の子どもたちからお礼のお手紙をいただきました。施設の方によりますと、年に数度こうした文化事業のご招待があるそうですが、鑑賞だけでなく公演前に舞台で使う物を作ることを楽しみ、自分が作ったものが使われる演劇をとても楽しんでいたということでした。
作業風景
回答ご担当者様個人としてお答えいただければと思いますが、活動を通して、考え方への変化、日常に対する変化などがあれば教えてください。
個人的には、変化は感じておりません。「ペングアート」で活動する子どもたちを障がいのある子どもたちだからと選んだわけでもありません。たまたま見た彼らの表現がとても個性的で自由奔放で面白く、私たちが2016年から作り続けている「劇のたまご」シリーズの舞台美術にすれば、通常考えられている舞台美術とは異なる面白さ、舞台美術の専門家が作ったセットとは視点の異なる斬新さで、このシリーズのひとつ「ぐりぐりグリム~シンデレラ」に合ったものになるのではと試みたのが最初でした。
障がいのある人たちのアートが福祉活動の一環として福祉というカテゴリーにとどまることなく、開かれた場で多くの人を驚かせたり、面白がらせたり、アーティストとして広く認識されることを、今後も演劇を通じて目指していきたいと思いますし、それが地域の共生社会の構築につながるのであれば幸いです。
札幌公演(開演前)
先の未来にこの課題に取り組みたい、また、こういったことができればいいなと思うことはなんでしょう?
2020年度も「ペングアート」に舞台を依頼して、劇のたまご「くるみ割り人形」(扇谷記念スタジオ・シアターZOOで実施)を公演する予定です。舞台製作を通じて引き続き子どもたちとの信頼関係をしっかりと構築し、今後は次のステップといえる「障害をもつ子どもたちが舞台に立つ」ことを目指したいと思っています。同じく2020年度から一般小学生を対象とする「劇のたまごを割ってみよう!」という年間を通じた演劇ワークショップと発表会を実施予定ですが、今後この事業を定着させ、障がいをもつ児童と健常児がともに舞台に立ち、ひとつの作品を創っていきたいと思っています。
一過性のイベントではなく、地域にこのような活動を定着させていくには、助成金の充実も必要ですが、公益財団として今後は地域社会からの協賛や後援にも努力し、地域が共生社会を育てていけるようになればと願っています。
PROCESS
制作スケジュール6月
舞台美術打合せ/劇場見学
6-8月
舞台美術・小道具製作
6-8月
舞台美術ワークショップ(12回)
8月
公演の実施(2か所・9日間・10回)
PROFILE
事業団体について
公益財団法人北海道演劇財団
劇のたまご「ぐりぐりグリム~シンデレラ」舞台美術製作プロジェクト
アートで子どもの療育をサポートする児童デイサービス「ペングアート」(札幌市内2か所で運営)と協働し、そこで活動する発達障害の子どもたちを対象に舞台美術ワークショップをおこない、2012年から開催されている「札幌演劇シーズン」(キッズプログラム)と清田区民センターで公演する劇のたまご「ぐりぐりグリム~シンデレラ」の舞台美術を製作するとともに、観劇に来た未就学から小学生までの様々な国籍の子どもたち、児童養護施設で過ごす児童など様々な環境にある子どもたちも参加して、開演前に毎回異なった舞台美術を完成させて上演。
住所:札幌市中央区南11条西1丁目3-17 ファミール中島公園内
電話番号:011-520-0710
WEB:http://www.h-paf.ne.jp/
